偽装結婚【入国管理局実態調査部について】
About the Immigration Bureau’s Fact-finding Department
これから国際結婚をして「日本人の配偶者等ビザ」を取ろうとお考えの方に情報を提供したいと思いますが、入国管理局には「実態調査部門」というものが設けられておりまして、国際結婚で配偶者ビザ申請をした「書類の申請内容」と「実態」が合っているかどうかを調査する専門部署があるということです。
「実態調査部門」というのは、年々増えている偽装結婚を摘発するための部署です。摘発するための部署ですので警察と同じような権限があり、取り締まりを行っております。
よってこれから入国管理局へ配偶者ビザ申請を行おうという方は、真っ当で真面目な結婚であればこそ、少しの矛盾点や虚偽的な表現が見つかれば「偽装結婚」ではないか?と疑われる可能性があるということを肝に銘じて申請を行っていく必要があります。
偽装結婚というのは、結婚する意志がないのに婚姻していることをいいます。なんのために偽装結婚するかというと、外国人側が「日本のビザ」を取りたいからなのですが、在留資格「日本人の配偶者等」というのは、とても使い勝手がよいビザで、どんな仕事をしても大丈夫、労働時間の制限がない、永住権や日本国籍が取りやすいなどいろいろなメリットがあります。
他のビザであれば、肉体労働では働けない、週何時間上限で労働時間に制限がある、永住や帰化がしにくいなどいろいろな制限があるのに、日本人の配偶者ビザはまったく制限がないのです。しかも配偶者ビザ取得のためには学歴もお金も必要ないのです。
「愛している」ことをよそおってビザを取得することを偽装結婚と言います。そして偽装結婚は犯罪の温床になっており、入国管理局では躍起になって偽装結婚の摘発に取り組んでいます。
入国管理局が真面目な結婚なのか、偽装結婚なのかを判断するポイントはいくつかあります。それは、過去偽装結婚で摘発した案件のデータから次に掲げるようなケースでは偽装結婚の疑いが強いと疑いを持つようにしています。
目次
- 1 (A)お互いの両親に挨拶していない。
- 2 (B)出会ってからすぐに結婚している。
- 3 (C)インターネット上の出会い系サイトで知り合っている。
- 4 (D)日本人の配偶者側(身元保証人)の収入が少ない。
- 5 (E)離婚歴がある方の配偶者ビザ申請は慎重に説明すべきです。
- 6 (F)年齢差が大きい国際結婚の場合は偽装結婚を疑われる可能性が高くなります。
- 7 (G)国際結婚仲介業者に依頼して結婚に至った場合は申請をより注意しなければならない
- 8 (H)結婚式を挙げていない
- 9 (I)不倫から結婚に至ったケースでは説明に注意が必要です。
- 10 (J)出会いが外国人パブなどの水商売のお店の場合
- 11 (K)交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきてなかった場合
- 12 (L)留学生成績不良からのビザ変更
(A)お互いの両親に挨拶していない。
一般的な常識であれば結婚する二人がお互いの両親に挨拶するのは当然です。結婚するカップルの大多数が結婚する時にお互いの両親に挨拶するのに、挨拶していない場合は入国管理局側の立場としては「どうして両親に挨拶していないのか?挨拶できない理由があるのか?偽装結婚だから挨拶できないのでは?」となるのです。もちろん真面目な結婚のカップルでも諸事情により両親に挨拶できない理由もあるでしょう。そうであれば真面目な国際結婚カップルは両親に挨拶できなかった合理的な理由をしっかり説明しなければならないのです。
(B)出会ってからすぐに結婚している。
普通の日本人同士のカップルの結婚に至るまでの平均交際期間は2~3年というデータがあります。結婚するカップルが平均2~3年交際してから結婚するというのに、数カ月でスピード結婚となれば平均から大幅にずれているわけで「なぜこんなに早く結婚したのだろう?さっさと結婚してビザを取りたかったからではないか?つまり偽装結婚では?」と入国管理局は疑うわけです。
もちろんスピード結婚=偽装結婚ではないことは知っています。スピード国際結婚されるカップでも真面目な結婚の方も多いでしょう。ただ、芸能人でもスピード結婚となればニュースになるのと同じことで、基本珍しいことなのです。珍しくとも真っ当な結婚であることを証明するために、なぜスピード結婚に至ったのかの経緯を詳細に説明する必要があります。
(C)インターネット上の出会い系サイトで知り合っている。
最近はネット社会ですので、インターネット上で男女が知り合って結婚に至るケースも多くあります。これもほとんどは結婚に至るカップルはインターネット上で知り合ったとはいえ、結婚にいたるということは真面目な交際を経たうえでご結婚に至ったとは思いますが、国際結婚に限って言えば偽装結婚の温床となっている出会い方ではあります。
偽装結婚になるケースとしては、日本人側は真面目なのだけれど、外国人側が日本に来たいがために手っ取り早く日本人を探すために出会い系サイトに登録しているというケースです。目的が結婚ではなく来日のための結婚になっているのです。
よってインターネット上で知り合い国際結婚に至った場合では、しっかり交際に至った経緯を説明し、偽装ではないか?という入国管理局の懸念を払しょくする必要があります。
(D)日本人の配偶者側(身元保証人)の収入が少ない。
日本人側が無職やアルバイト・パートなどで収入が著しく低い場合は、配偶者ビザの取得が難しくなります。愛はあっても結婚生活には現実的にはお金がかかるわけで、お金はどうするんだ?という入国管理局側からの視点があります。お金がなければ結婚生活は早々に破たんする可能性が高くなりますし、生活保護になれば外国人を入国させたことで国の負担が大きくなるだけです。
ご本人夫婦に安定した収入がない場合には、ご両親や親族の援助を受けたり、その他にも生活を安定させるための申請手法がありますので、収入が少なくて配偶者ビザ申請に不安があるという方は一度お問合せいただければと存じます。
(E)離婚歴がある方の配偶者ビザ申請は慎重に説明すべきです。
お互いに初婚ではなく再婚の場合は、配偶者ビザ申請にあたって注意すべき点があります。まず日本人側が過去に外国人と結婚と離婚を繰り返していた場合、その結婚の期間にもよりますが、過去の結婚期間がかなり短くて離婚していた場合、入国管理局が疑う可能性があるのは過去の結婚は日本人が外国人の配偶者ビザを取らせるために協力していたのではないか?ということです。
次に外国人側も同じで過去に日本人と結婚、離婚を繰り返していた場合も配偶者ビザを取るために日本人に協力してもらっていたのではないか?という疑いを入国管理局からかけられます。
もちろん、過去に離婚経験があるからすぐに不許可となるわけではありませんが、上記のような観点を入国管理局はもっていますので、過去離婚経験がある方は、今回の結婚は正真正銘真っ当な結婚であることをしっかり文書で説明&証明しなければ不許可リスクが高くなるということを心にとめておいてください。
(F)年齢差が大きい国際結婚の場合は偽装結婚を疑われる可能性が高くなります。
日本人側が40~50代で、外国人側が20代~30代前半の場合の国際結婚では、もしかしたら偽装なのでは?と入国管理局が考える可能性があります。統計上では、結婚するカップルの年齢差というのは平均的には5歳差くらいまでが非常に多いのですが、10歳以上の年齢が離れた夫婦というのは日本人同士の結婚でも珍しいものです。結婚というのは同世代と結婚する割合が高いのです。仮にあなたが50代で20代の相手と結婚したら周囲に驚かれるでしょう。それくらい珍しいことなのですが、国際結婚では割と多いのです。そして偽装結婚で摘発された過去の事件でも年齢差が大きいカップルが多かったので、入国管理局も年齢差が大きい=偽装かも?という観点になります。
年齢差が大きい国際結婚カップルではほとんどのケースで日本人側が中年もしくは高齢です。男女問わずです。外国人側が若いケースがほとんどです。
年齢差が大きくても正真正銘真っ当な結婚である方がほとんどかと思いますが、こと国際結婚においては年齢差があるカップルが偽装結婚で摘発されている実態があり、入国管理局としては疑わざるを得ないのです。よって年齢差が大きく配偶者ビザを取得したい場合にはしっかりとした結婚に至るまでの経緯説明と、2人の交際実態を立証する資料を提出し入国管理局に真実の結婚だと納得してもらう必要があります。
(G)国際結婚仲介業者に依頼して結婚に至った場合は申請をより注意しなければならない
国際結婚仲介会社はインターネットで検索すると様々な会社がヒットします。中国人、ベトナム人、フィリピン人、東欧諸国の日本人と結婚したい外国人女性を紹介するサービスが多いようです。国際結婚仲介業者に申し込むと一番多いパターンは外国へのお見合いツアーです。お見合いツアーでは日本人が外国に行って複数の女性とお話しして、1回目の渡航もしくは2回目の渡航でご結婚を決めることが多いようです。
結婚を決めるのは本人の自由ですので、1回や2回だけの渡航で結婚を決めるのは自由です。しかし、1回や2回だけ外国へ渡航し数日滞在しただけで結婚を決めるのは交際実績としてはほとんど皆無なわけであり、その人を好きになって結婚したというよりも、結婚がまず先にありきの結婚となっているわけです。一般的な外国人側の視点としては、その日本人が好きだから結婚したのではなく、日本人だから結婚した、日本に行けるから結婚したという要素が多い方が多いのです。日本に行けるから結婚したというのはつまりビザ目的とも言えます。
さらにお見合い結婚の場合は、お互いに言葉が通じないことが多くどうやってコミュニケーションをとっているのか?という疑念を持たれます。
また国際結婚仲介業者経由で結婚した場合に配偶者ビザ申請上の注意点としては、依頼した国際結婚仲介業者の過去の実績です。おそらく国際結婚仲介業者はビジネスとして仲介している以上、過去にも複数のカップルを成立させてきたはずです。そしてそのカップルは配偶者ビザ申請をしてきました。その後のカップルがすぐに離婚しているようであれば仲介業者が悪質なのでは?という疑いを入国管理局からかけられています。実際に仲介業者を通して結婚した場合は、仲介業者の存在とその詳細を申請書には記載しなければなりません。
しかしながら、もちろん国際結婚仲介業者を経由してお知り合いになり、正真正銘真っ当なご結婚に至った方もたくさんいらっしゃいます。したがって国際結婚仲介業者を経由してご結婚された方は上記のような入国管理局側の疑念を払しょくできるようなしっかりとした準備と申請をする必要があります。
(H)結婚式を挙げていない
日本人同士の結婚では、ほとんどのカップルは婚姻したら結婚式をしています。あなたの周りの友達を考えてみてください。ほとんどのカップルは結婚式をしているはずです。それは国際結婚でも同じです。統計上の問題ですが70%以上のカップルは結婚式を挙げています。再婚のカップルではもう少し挙式率は落ちるようです。金銭面、労力面など様々な理由はあると思いますが、挙式しないほうが少数派です。
そこで偽装結婚という観点から見ると挙式をしない比率というのはものすごく高くなります。なぜなら本当の結婚ではないのに親族、友人らを招いて、さらに多額のお金を使ってまで結婚式はあげたくないからです。となると偽装結婚ではないのに挙式をしていない場合は、入国管理局からある程度偽装かも?という疑念を持たれると想定し、しっかりとした申請で対処することが必要です。
(I)不倫から結婚に至ったケースでは説明に注意が必要です。
お付き合いを始めた当初、すでに結婚していて現在の配偶者と結婚に至った場合は、つまり不倫をして、配偶者と別れ、現配偶者とご結婚されたというケースだと思います。ご結婚に至るケースとしてはご本人のお気持ちはともかく、社会通念上バッシングをうけるような行為、また損害賠償を受けるような行為ですので、配偶者ビザ申請においては注意が必要です。
国際結婚における配偶者ビザ申請では「申請書」や「質問書」に事実と異なるウソの記載をすると2度と取り返しのつかない事態に陥ることがありますので、ご自身の状況に不利な点があっても安易に事実と異なる内容を記載して申請せずに、当事務所にご相談ください。
(J)出会いが外国人パブなどの水商売のお店の場合
出会いが外国人パブなどの水商売のお店の場合(日本でも、外国でも)は、不許可の可能性が高くなります。なぜなら、水商売で働いている場合は税金をきちんと納めていない等、来日以降の在留状況に問題があるとみなされる場合が非常に多いためです。中にはそもそも不法入国であったり、不法就労のような場合も現実的にはあります。
また、本人は違法なことをしてなくてもお店が違法状態である場合もあります。お店が違法というのは、具体的には風営許可をとっていない、留学生を雇っている、就労制限のある外国人女性を雇っているなどです。外国人パブで接客ができる外国人は、「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」だけです。そのほかの在留資格を持つ外国人を接客で雇うと不法就労となります。では出会いは水商売のお店ではあったが本気の結婚の場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
まずは2人の交際の経緯をできる限り詳しく説明する必要があります。
- ・日本にきた経緯、具体的な年月日や在留資格等の説明
- ・来日から現在までの在留資格の変遷
- ・水商売で働くことになった経緯
- ・結婚後も水商売のお店で働くのか
- ・結婚後の婚姻生活上の経済基盤の説明
上記のことを、詳細に説明をします。そして、2人が出会った経緯や交際に至った経緯・結婚を決めた気持ちの変化等をあわせて説明すべきです。結婚後も水商売は続けるのか、辞めるのか・配偶者の考え(理解)についても説明したほうが良いでしょう。それに関わる立証資料として、お互いの写真やお互いの通信記録等・辞める場合は退職願の写しを提出するとなお良いでしょう。
出会いが外国人パブなどの水商売のお店の場合には、上記のように詳細な説明とそれに伴う充実した立証資料の提出によって、偽装結婚の疑いを払拭していく必要があります。
(K)交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきてなかった場合
交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきてなかった場合は、不許可リスクが高くなります。なぜなら、写真というのは交際していることを証明する重要な立証資料になるからです。現在のようにスマホや携帯で気軽に写真が撮れる時代にあって、写真がないというのはかなり不自然だからです。
2人の写真がないのは偽装結婚であるということを自ら証明しているようなものです。つまり偽装結婚であれば、そもそも交際の証明となる写真が用意できないのです。なぜなら2人で旅行に行ったこともなければ、友達や親族との写真も撮れないでしょう。過去の写真がまったくない場合は入国管理局としては警戒してきます。
(L)留学生成績不良からのビザ変更
日本語学校の留学生や、専門学校の留学生が成績不良で退学になった場合や、出席率不足で留学が更新できない場合に日本人と結婚し配偶者ビザを取りたい場合は要注意です。つまり不許可リスクが高くなります。留学生というのは留学ビザで日本に滞在していますが、勉強することが本分です。日本で勉強するために留学ビザが与えられているのです。
それなのに成績不良や出席率が悪いのは留学ビザとしての活動をしていなかったと入国管理局に判断されます。つまり在留状況が悪いという烙印を押されてしまいます。もしかしたらアルバイトばかりしていて勉強する時間がなかったのではないか、週28時間以上働いていたのではないか?という疑惑を持たれます。
日本に住んでいるのですから日本人と知り合い恋愛することもあるでしょう。恋愛を経て結婚することもあるでしょう。
しかし、入国管理局はこう考えます。【留学ビザが更新できなくなったから手っ取り早く日本人と結婚して日本に住み続けたいのではないか?】ということです。学費も払いたくない、学校に行きたくない、でも日本に住み続けるために日本人と結婚したのではないか?という考えです。
よって並み以上の成績で学校を卒業した留学生が日本人と結婚する場合は交際の経緯を説明すればいいのですが、成績不良の留学生が日本人と結婚する場合で、まっとうな恋愛を経て結婚する場合は申請難度がかなり上がります。