観光ビザから配偶者ビザへの変更
はじめに
本コンテンツでは、観光ビザで日本に入国した外国人が、配偶者ビザ(正式には「日本人の配偶者等」の在留資格)へ変更を希望する場合の法的手続きとそのポイントについて詳述します。出入国在留管理庁及び出入国在留管理(以下「当局」ないし「入管」という。)には、観光ビザから配偶者ビザへの変更が許可されないというのが基本です。
端的にいえば、観光ビザで入国したにもかかわらず配偶者ビザへの変更は、当局としては、
「手順が正当ではないので順序立てた手順を踏めというのが当局の立場です。」
このテーマは、入管法に関する一定の知識を要するものであり、実務でも多くの相談が寄せられる分野です。以下にその重要なポイントを整理して解説します。
目次
観光ビザから配偶者ビザへの変更が困難な事由
観光ビザ(短期滞在)の在留資格から配偶者ビザへ変更することは、法的には可能ですが、ただし、以下の条件を満たす必要があります。(出入国管理及び難民認定法以下「入管法」という。)第20条では、次のとおり定めています。
「在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格の変更を受けることができる。」
また、短期滞在の在留資格から変更する場合に関しては、第20条第3項但し書において次の制約が規定されています。
この但し書の文言が示すように、観光ビザから配偶者ビザへ変更するためには「やむを得ない特別の事情」が必要です。観光ビザからの変更が可能であるにもかかわらず、一般的に「許可が難しい」とされる理由は、上記の「やむを得ない特別の事情」の存在が重要な審査基準となるためです。
観光ビザから配偶者ビザへの変更が難しいといわれる理由
観光ビザ(短期滞在)は、短期間での滞在・出国を前提として発給されるものであり、取得が比較的簡易である一方、中長期的な在留を目的とする配偶者ビザとは根本的に異なります。この違いから、日本政府は、以下の観点で審査を厳格に行っています。
1.短期滞在ビザの目的との齟齬:観光目的で入国した者が、中長期的な在留目的に変更する場合、当初のビザ申請時に提出した計画との整合性が問われます。
2.在留資格認定証明書(COE)の必要性:配偶者ビザ申請においては、通常、入国前にCOEを取得することが求められます。COEは厳格な事前審査を経て発行されるものであり、これを省略する形で配偶者ビザへの変更を行うことは例外的な対応となります。
【COE】の解説
在留資格認定証明書(COE)は、日本に入国する外国人が、日本での活動が在留条件に適合していることを法務大臣が事前に審査して交付する証明書です。COEの必要性は、次のような点にあります。
・滞在を希望する外国人の来日前に在留資格の審査を終えることができる
・査証(ビザ)発給申請や上陸審査が円滑になる
・日本大使館等での査証発給手続きや日本の空港での上陸審査手続きが簡易・迅速化される
COEは、観光ビザとは異なり、90日以上日本に住む場合には必要です。COEを取得するには、日本人が所在地を管轄する入管局で交付許可申請を行う必要があります。審査は受理から55日~70日程度かかり、入国審査官のチェックが通ればCOEが簡易書留で郵送されます。
COEの有効期間は交付日より3ヶ月間で、有効期限内にビザを取得し入国しなければ無効となります。ビザが有効でもCOEの有効期限が過ぎていれば、COEを再度取り直さなければなりません。
配偶者ビザの取得方法
配偶者ビザの取得には、以下の2つの方法があります。
①在留資格認定証明書(COE)を取得し、配偶者ビザで入国する方法
日本国外でCOEを申請し、取得後に配偶者ビザを発給されて入国します。
COEの発行には通常1~3か月を要し、事前準備が必要です。
②観光ビザで入国後、配偶者ビザへの在留資格変更を申請する方法
観光ビザで滞在中に在留資格変更許可申請を行い、配偶者ビザを取得します。この方法は、滞在期限内に手続きを完了させる必要があり、実務上、90日間の観光ビザで入国することが前提となります。
①在留資格認定証明書交付申請(=COE申請)を行い、配偶者ビザで日本に入国
まず、COE申請は、日本の入管で行います。
申請を行うことができる人は限定されています。
上記申請で申請人となる方の親族で、かつ日本に住んでいる人に限定されます。
申請人は海外にいることがほとんどのため、申請人の配偶者や配偶者の両親に申請してもらうことが大半です。そして、COE申請で許可が下りると、入管からCOEが発行されます。
その後、COEを海外の配偶者に送り
海外にある日本大使館または領事館で査証(いわゆるビザ)の申請を行います。(下記表参照)
そして、大使館からのビザが発給された後に、日本に入国します。
なお、COEの有効期限の問題から、基本的にはCOEが発行された日から3ヶ月以内に日本に上陸しなければいけません。
日本に入国後は、到着した空港、海港で上陸審査を受けます。上陸審査を終えた後は、外国籍配偶者に在留カードが交付されます。
【在留資格認定証明書】手続改正
2023年3月17日より、在留資格認定証明書が電子メールで受け取ることができるようなりました。なお、これまで発行されてきた紙の在留資格認定証明書についても、コピーを提出だけでビザ申請を行うことができるようになりました。
そのため、国際郵送にかかる手間や費用、時間を大幅に削減できるようになりました。
参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/10_00136.html
②観光ビザで日本に入国後、婚姻手続等を経て配偶者ビザに在留資格変更許可申請
つぎに、外国人配偶者が観光ビザで日本に入国します。
その後、婚姻手続きが未了であれば婚姻手続きを行ない、その後外国人配偶者および日本陣配偶者が日本の入管で在留資格変更許可申請を行います。
在留資格変更許可申請の許可が交付されると、入管からはがきサイズの許可通知書が申請時の住所地に郵送されます。この許可通知書を持って、入管で在留カードの交付手続きを行うことで、在留カードを受け取ることできます。
「やむを得ない特別の事情」の具体例
やむを得ない特別の事情」として認められる可能性が高い事例は以下のとおりです。
1.観光ビザ滞在中に婚姻が成立した場合
新婚夫婦が直ちに離別することを避けるため、変更が認められることがあります。
2.妊娠中または子どもがいる場合
配偶者のサポートが不可欠である状況では、人道的配慮が考慮されます。
3.本国の不安定な状況
現在においては中東紛争やミャンマーのクーデターなどの事情により帰国が困難な場合、変更が認められる可能性があります。
これらはあくまでもほんの一例であり、個別具体的な事情に応じて判断が異なります。
観光ビザの在留期限と特例期間
観光ビザの在留期限(15日、30日、90日)は変更申請の可否に影響します。実務上、審査には約40日を要するため、90日の在留期間がある場合にのみ、観光ビザから配偶者ビザへの変更が可能です。また、申請期間中に在留期限を迎えた場合、特例として最長2か月の延長が認められる場合もあります。
配偶者ビザの審査基準
配偶者ビザの審査では以下の要件が問われます。
1.実体を伴う婚姻関係の存在:法律上の婚姻関係に加え、実際の夫婦生活が認められること。
2.経済的基盤の有無:夫婦の生活を安定的に支えられる収入や資産があること。
これらに加え、観光ビザからの変更の場合には「やむを得ない特別の事情」の立証も求められるため、審査がより厳格になる傾向があります
変更手続に必要な書類
変更手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
共通書類
- 在留資格変更許可申請書 所定の様式に必要事項を記入します。
- 質問書
- 申請理由書
- 返信用ハガキ(宛先を明記)
申請人(外国人)に関する書類
- 顔写真(縦4cm×横3cm)
- 申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書
- パスポートの原本(提示)
- 在留カードの原本(提示)
- 履歴書
- 大学等の卒業証明書又は在学証明書
- 日本語能力を証明する資料
- その他の書類
日本で就労している場合(アルバイト等)
- 住民税の納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)
- 源泉徴収票
配偶者(日本人)に関する書類
- 身元保証書
- パスポートの写し
- 戸籍謄本
- 世帯全員の記載のある住民票
- 住民税の納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)
- 在職証明書
- 給与明細書の写し
- 勤務先の会社案内
交際及び結婚の事実を裏付ける書類
- スナップ写真(結婚式、双方親族との食事会など、夫婦で写っており、容姿がはっきり確認できるものを2~3枚程度)
- 国際電話の通話記録が分かる資料
- メール履歴が分かる資料
住居及び生計に関する書類
- 2人の新居の写真(外観、玄関、台所、リビング、寝室など)
- 新居の不動産賃貸借契約書の写し(所有の場合は登記事項証明書)
- 日本で申請人(外国人)を扶養する者の預金通帳のコピー
変更手続の注意点
申請時期: 現在の在留期間満了の90日前から申請手続きをすることができます。
虚偽の申請: 虚偽の申請は、将来のビザ取得に悪影響を及ぼす可能性があります。
変更後の在留条件: 配偶者ビザに変更後も、在留条件を守ることが重要です。
成功させるためのポイント変更後の生活と注意点
書類の準備 | 必要な書類を漏れなく、正確に準備しましょう。 |
日本語能力 | 日本語能力の証明は、審査において有利に働くことがあります。日本語能力試験の受験を検討しましょう。 |
安定した生活基盤 | 日本人配偶者との安定した生活基盤を証明することが重要です。 |
専門家への相談 | この手続きは専門性が高く結婚生活を安定させるためにも在留変更手続きの失敗はできません。したがって、行政書士などの専門家に相談することで、スムーズな手続きを進めることができます。 |
変更後の生活と注意点
配偶者ビザに変更後、就労の幅が広がる一方で、新たな注意点も出てきます。
税 金 | 日本で働くと、日本の税金を納める必要があります。 |
年 金 | 国民年金への加入手続きが必要です。 |
社会保険 | 健康保険や厚生年金への加入手続きが必要な場合があります。 |
まとめ
観光ビザから配偶者ビザへの変更は、日本での生活をより豊かにする第一歩です。しかし、手続きは複雑であり、専門的な知識が必要となります。行政書士にご相談いただければ、
書類作成の代行
申請手続きの代行
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法改正に関する情報提供
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